この医学雑誌に掲載されたレビュー論文は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の治療に対する心身介入(マインド・ボディ・インターベンション, MBI)の効果を検証するために、既存の研究を系統的に調査したものです。著者らは、瞑想、ヨガ、気功など、多様なMBIがME/CFSの疲労感、不安、抑うつ、生活の質といった症状に与える影響を評価しました。論文は、これらの介入法の現状のエビデンスをまとめ、今後の研究における標準化されたアウトカムの必要性を強調しています。
心身介入は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の疲労、睡眠の質の改善、痛み、不安、抑うつ、生活の質、パフォーマンス(身体的、精神的、感情的側面)、および一部の身体症状に効果を示したことが、提供された情報源から示唆されています。
具体的には、以下の症状に対する効果が報告されています。
疲労 (Fatigue):多くの研究で、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)、MBCT(マインドフルネス認知療法)、リラクゼーション療法、気功、および等尺性ヨガなどの心身介入が、疲労の軽減に効果を示しました。例えば、Surawyらの研究、Thomasらの研究、Okaらの研究、およびChanらの研究などが該当します。
睡眠の質 (Sleep Quality):気功(特に八段錦気功)は、睡眠の質の改善に効果を示しました。Chanらの研究で報告されています。
痛み (Pain):心理的柔軟性を高める介入(ACT)が、障害(Pain disability indexで評価)の軽減に効果を示しました。Jonsjoらの研究で報告されています。また、等尺性ヨガも痛みの軽減に効果を示しました。
不安 (Anxiety):MBSR/MBCT、リラクゼーション療法、気功などの心身介入が、不安の軽減に効果を示しました。Surawyらの研究、Thomasらの研究、およびChanらの研究などが該当します。
抑うつ (Depression):MBSR/MBCT、気功などの心身介入が、抑うつ症状の軽減に効果を示しました。Surawyらの研究、およびChanらの研究などが該当します。
生活の質 (Quality of Life):認知再構成、気功、およびMBCT/MBSRなどの心身介入が、生活の質の向上に効果を示しました。Lopezらの研究、Chanらの研究、およびSurawyらの研究などが該当します。
パフォーマンス (Performance):リラクゼーション療法は、機能的パフォーマンス(Karnofsky scaleで評価)の改善に効果を示しました。Thomasらの研究で報告されています。
その他の身体症状 (Physical Health Symptoms):ある研究では、慢性疲労症候群に似た症状を持つ女性において、八段錦気功がアディポネクチンレベルを上昇させる可能性が示唆されており、これは抗うつ効果に関連する可能性があります。また、等尺性ヨガは、一部の血中バイオマーカーや自律神経機能に急性的な影響を与えることが示唆されています。
ただし、これらの研究で用いられた診断基準(CDC criteria、Oxford criteria、Canada criteriaなど)や評価方法が多様であるため、結果を一般化する際には注意が必要です。また、一部の研究では効果が統計的に有意ではない場合や、効果量が小さい場合も報告されています。
Khanpourらの2021年の系統的レビューでは、ME/CFSの症状と生活の質に関連するすべての転帰が考慮され、マインド・ボディ介入(MBSR、MBCT、リラクゼーション、気功、ヨガなど)が、コントロール群と比較して、疲労の重症度、精神機能、および不安/抑うつを改善したことが示されています。
